大学病院の救急医ブログ

大学病院の救急医が考える医療のこと、教育のこと、キャリアのこと

2020-01-01から1年間の記事一覧

異常死とは? CPA搬送患者が亡くなった場合は死体検案書それとも死亡診断書?

私は、心肺停止(CPA)で搬送された方が死亡した場合、警察に届けるべきかどうか?死体検案書かそれとも死亡診断書を書くべきなのかを明確に教わったことがありません。数年前に集中治療医学会の臨床倫理講座を受講しましたが、そこでも明確な答えにたどり着…

救急外来での「めまい2」BPPVについて

前回書いた 救急外来の「めまい」のなかで https://mokuyama.hatenadiary.jp/#edit 救急外来で「めまい」を訴える患者さんが来たときの鑑別診断の順番は以下の通りと書きました。 前失神かどうか? 中枢性めまいかどうか? BPPVかどうか? BPPV以外の末梢前…

救急外来での「めまい」

めまいは救急外来でよく遭遇する症状です、多くの研修医が苦手意識を持っているのではないでしょうか。その原因は「まめい」という訴えの曖昧さと「めまい」の原因疾患が多岐にわたり、時には生命にかかわることが原因である場合もありうることによると思い…

目標を持つことの意義

子供の部活動の会報に書いたことを転載します。 新型コロナウイルス感染大流行により令和2年度は全ての大会が中止となり3年生は引退しました。新チームになっても今後の大会が開催されるかどうかは不透明です。この状況は選手の皆さんへの影響は計り知れない…

球磨村診療所復旧支援

7月15日球磨村の災害医療指揮所がある球磨村総合運動公園に向かった。球磨村は大きな被害をうけ死者24人と熊本県内で最も多く、人口約3400人のうち約400人が人吉市の避難所で生活していた。約1300人が村内に残っているとみられ、残りは親戚などに避難してい…

非接触型体温計

7月14日支援保健師の新型コロナウイルスPCR検査陽性は、避難者や地元住民のみならず外部からの支援者にも大きな影響を与えた。 巨大災害支援団体が一時休止を決めた。他道府県でも派遣中止を決めたところもあった。 COVID19感染者を診療しているはずの病院関…

心の壁 「情報をくれ」の前に「情報をわたす」

7月14日朝、3時間程の睡眠のあとやっとの思いでホテルを出た。 車の中で海平と前日を振り返った。実はDMATロジスティクスチームがPCR検査を支援するために所属病院と所属都道府県の許可をとってからという指示がDMAT事務局からでた。DMATは所属都道府県と所…

支援者が新型コロナウイルスPCR陽性

毎日、保健所が主催し16時30分から市町村の保健師、医師会、医療機関、支援団体など関係機関を集めた会議が行われていた 7月13日夕方その会議が中止と連絡が来た。 その後、盾保健所長から極秘の相談があると言われた。 「7月12日まで支援に来てくれていた他…

保健医療調整本部

7月12日16時頃、人吉保健所に到着した。 保健所の入口横の一角に「人吉・球磨医療圏保健医療調整本部(人吉保健所内)」があった。 事務局長を務めるDMATロジスティクスチームの二村先生、副事務局長の嶋先生が笑顔で出迎えてくれた。避難所や病院に出かけた…

九州豪雨 熊本空港着

7月12日羽田空港経由で熊本空港に向かった。DMATロジスティクスチーム隊員で看護師だけど調整員登録となっている海平と一緒だ。彼とは熊本地震、北海道地震、昨年の台風19号で一緒に活動した。彼も経験をつんで頼りになる男になった。 羽田空港はガラガラだ…

九州豪雨 DMATロジスティクスチーム

2020年7月4日21時58分DMAT事務局からメール中国四国ブロックのDMATロジスティックチーム隊員への派遣要請であった。 7月5日報道をみて熊本県人吉市、球磨村の被害は甚大で避難生活が長期になるのは間違いなさそうだった。どの災害でも急性期から慢性期への移…

ルーティーンワーク化する医者という仕事2

前回「ルーティーンワーク化する医者という仕事」という話をしました。https://mokuyama.hatenadiary.jp/entry/2020/06/28/142559 医者をやっていくには膨大な知識が必要です。大学6年間の知識では全く足りません。さらに手術や内視鏡などの技術が必要な診療…

ルーティーンワーク化する医者という仕事 

田舎で育って田舎で働いているせいもあると思いますが、私が医者になった当時は私の周りにはまだ「お医者様」という雰囲気がありました。高齢者の方々を診察すると若い私でさえ敬われている感覚をうけました。 それから20数年経った現在そのような感覚を受け…

意識レベルの評価 グラスゴーコーマスケール

救急外来での初期対応では、まずABCDEの評価(バイタルサインのチェック含む)を行いますが、本日はDの評価、つまり意識レベルの評価について書きます。 日本ではJapan Coma Scale (JCS)が広く普及しています。https://ja.wikipedia.org/wiki/Japan_Coma_S…

救急カルテの書き方

今年行われた第114回医師国家試験にもPOMR(Problem Oriented Medical Record:問題指向型診療録)に関する問題があります。 B13 咳嗽を主訴に受診した、喫煙をしている 25 歳男性の問題志向型医療記録(POMR)に基づいた診療録の一部を以下に示す。 問題リ…

医師のキャリアプランとは?高校時代から振り返る

「医師のキャリアプラン」について学生や研修医に向けて話しました。そこで私のこれまでのキャリアをお話ししました。 私が医学部を受験することを決めたのは「病気で困っている人を助けたい」などの崇高な思いがあったわけではありません。田舎生まれの私に…

プライマリーケア集中セミナー「ショックと輸液」

先日、指導医が持ち回りで行っているプライマリーケア集中セミナーで話をしました。 「早期にショックを認知して、酸素を投与して、輸液を開始して、必要ならノルアドレナリンを開始する」という本当の初期対応の話です。 もう一つのポイントは「輸液製剤の…

呼吸の評価と酸素療法

研修医向け講義の第2弾です。 呼吸の評価と酸素療法の実際についてスライドを提示します。 呼吸数は非常に重要なバイタルサインですが、日本の病院でも、日本以外の病院でも記録されず呼吸数の重要性が認知されていないようです。スライドでは2008年のオース…

吉田松陰「講孟余話」「松下村塾人の育て方」

OVID-19 の拡大防止のため緊急事態宣言下のGWはどこにも行かず自分のための時間を過ごすことができました。GWに読んだ吉田松陰の本を紹介します。 これまでも吉田松陰のことは多少知っていましたが、黒船に乗り込もうとして捕まったとか、獄中で囚人達に学問…

初期研修医向け救急対応

こんにちは、秋田大学救急集中治療医学講座の奥山です。COVID19に対応中の全国の医療関係者の皆様、行政の皆様、その他多く関係機関の皆様に感謝申し上げます。幸い秋田県ではCOVID-19の患者は少なく重症患者を担当する予定の私達はまだ一人の患者さんも診て…