大学病院の救急医ブログ

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意識レベルの評価 グラスゴーコーマスケール

救急外来での初期対応では、まずABCDEの評価(バイタルサインのチェック含む)を行いますが、本日はDの評価、つまり意識レベルの評価について書きます。

 

日本ではJapan Coma Scale (JCS)が広く普及しています。https://ja.wikipedia.org/wiki/Japan_Coma_Scale

日本で脳神経外科ドクターが「レベルは?」と聞くときは、ほとんどの場合JCSの数値を聞いているので「3です」とか「10です」と答えるのが正解です。

ただし、JCSは日本でしか通用しませんので英文論文には出てきません。

世界のゴールデンスタンダードはGlasgow Coma Scale (GCS)ですので救急外来を担当する医師はGCSを使いこなす必要があります。救急、集中治療領域ではAPACHEⅡやSOFAなどにGCSが組み込まれているので使いこなすのが当たり前のスコアです。

 

GCSは1974年に英国のグラスゴー大学グラハムティースデール先生が考案した評価方法で、急性脳障害患者の意識レベルを共有するための方法として開発されLancetに発表されました。

Teasdale G, Jennett B: Assessment of coma and impaired consciousness: A practical scale. Lancet 304:81–84, 1974

その後いくつかの改良がくわえられ、1979年には3-15点のスコアが発表されました

Teasdale G, Murray G, Parker L, Jennett B: Adding up the Glasgow Coma Score. Acta Neurochir Suppl (Wien) 28:13–6, 1979

2014年には発表から40年が経過し、さらにシンプルになったGCSが発表されました

詳しくはグラスゴー大学のGlasgow Coma Scaleのページをご覧ください。実際の評価を解説した動画もあります。クリニカルクラークシップの学生にはこの動画を見せて指導しています。

https://www.glasgowcomascale.org/

 

GCSでしばしば問題になるのは、意識レベルとは別に眼瞼の腫脹のために目が開かない、気管挿管チューブが入っていて会話ができない場合にどのようにすべきかということです。上記のGlasgowcomascaleのページによるとそのような場合はNot testable NTと記録するとあります。

外傷初期診療ガイドラインJATECでは、気管挿管している場合はVT=1点とスコアしGCS合計8点以下は重症意識障害なので気管挿管の適応であると教えています。これは数ある代替法の一つであり、「VT=1点とスコアしGCS合計8点以下は重症」は広く受け入れられているようです。

ただし、上記ホームページには、合計点数は患者の状態の重症度の概要を提供しますが、例えば、合計8点はE2V2M4またはE1V1M6になる可能性があり、患者の状態の重症度に非常に異なる影響を与えることに注意することが必要であると書かれています。

また、痛み刺激は、指の爪床、僧帽筋、眼窩上切痕の3か所で、日本でよく行われている拳で胸骨を刺激する方法は強く推奨しないと書かれています。2014年に当時の上司から教えてもらい、このページを見たときは「ほー、そうなのか」と目から鱗でした。

なかなか勉強になるホームページですので是非みてください。

 

 

GCSに加え瞳孔所見に関して説明した、救急外来での意識レベル評価のスライドを貼っておきます。