救急外来での「めまい2」BPPVについて
前回書いた 救急外来の「めまい」のなかで
https://mokuyama.hatenadiary.jp/#edit
救急外来で「めまい」を訴える患者さんが来たときの鑑別診断の順番は以下の通りと書きました。
- 前失神かどうか?
- 中枢性めまいかどうか?
- BPPVかどうか?
- BPPV以外の末梢前庭障害かどうか?
- その他の原因(高齢者のふらつき、歩行障害など)は考えられるか?
- 上記にあたらない場合は、原因不明(心因性含む)
私はまず、循環器系の問題ではないか?いわゆる前失神症状ではないか?を判断し、次に脳血管障害ではないか?を判断し、このどちらも否定された場合は、末梢前庭神経系のめまいを考えますが、そのかなでも頻度の高い「良性発作性頭位めまい症(benign paroxysmal positional vertigo : BPPV)」を判定しています。
最近、病態の解明にともないBPPVの診断基準も細分化されてきていますが、
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jser/76/3/76_233/_pdf
2006年に厚生労働省研究班により発表された「良性発作性頭位眩暈症の診断の手引」がプリマリーケア領域では分かりやすいと思います。
1.空間に対し特定の頭位変化をさせたときに誘発される回転性めまい
2.めまい出現時に眼振が認められるが,次の性状を示すことが多い.
① 回転性要素の強い頭位眼振
② 眼振の出現に潜時がある
③ めまい頭位を反復することで眼振は軽快または消失する傾向をもつ.
3.めまいと直接関連をもつ蝸牛症状,頸部異常および中枢神経症状を認めない.
さらに、起床・ 就寝時,棚の上の物を取る上向き,または洗髪の ような下向き頭位,寝返りなどで誘発されることが多いため、病歴聴取から疑い、上記の特徴があればBPPVの疑いが強いと判断します。
BPPVが疑われたら、Dix-Hallpike試験やhead-roll試験をおこない、典型的な所見が得られればBPPVと診断でき頭部CTやMRIは不要です。詳細はスライドを参照してください。
- BPPVに合致する病歴がありDix-Hallpike試験で、回旋性のめまいと加速性の眼振が見られ、反対側で陰性→後半規管型 BPPV
- BPPVに合致する病歴があり、Dix-HallPikeで眼振がない、または水平性眼振が見られた場合→head-roll試験→方向交代性水平性眼振 →水平規管型 BPPV
頭位変換眼振検査で典型的な所見が得られない時は頭部CTや場合によっては頭部MRIを施行しています。
ただし、BPPVの症状は多様であり、典型的な所見を呈しない患者さんでも頭部CTや頭部MRIでも異常を認めない症例も多く経験します。
BPPVの治療は、Particle repositioning maneuvers 頭位治療がメインです。詳しくはスライドを参照してください。
薬物治療はというとUp to Dateには「Medications are not useful for the brief episodes of vertigo associated with BPPV…」と書かれています。
Epley法等の頭位治療を行う際に補助的に制吐剤や抗ヒスタミン薬を使用するのみです。日本でよく「炭酸水素ナトリウム」静注が行われていますが、私は10年以上めまいに対して使用していませんが、全く問題ありません。
救急外来でよく遭遇する「めまい」を訴える患者さんの対応もこのようなアルゴリズムを決めておくと迷いなく診療ができます。
不要な頭部CT/MRIを省略できます。